はじめに|なぜ「価値観」を見つめ直す必要があるのか?
人はなぜ「やる気が出ない」と感じたり、「なぜあの人と分かり合えないのだろう」と思ったりするのでしょうか。その背景には、自分でも意識しにくい「価値観」の違いが隠れていることがあります。
本記事では、SOLVED Podcastの“Values”エピソードで語られた内容をもとに、心理学・哲学・文化人類学の観点から価値観の本質を紐解きます。
価値観とは?|人間を動かす“見えないエンジン”
◉ Shalom Schwartzの価値観ホイール
Schwartz教授は、以下のように人間の価値観を整理しました:
- 自己超越(Self-Transcendence):寛容・社会正義・博愛
- 保守(Conservation):伝統・安全・秩序
- 自己強化(Self-Enhancement):達成・力・名誉
- 変化の追求(Openness to Change):自己方向性・刺激・好奇心
このホイールは、価値観の“対立”や“補完関係”も可視化でき、例えば「自己超越」と「自己強化」はしばしばバッティングします。
自己実現との関係|Carol Ryffの6つの心理的ウェルビーイング
心理学者Carol Ryffは、幸福や充実感は以下の6つの領域によって支えられていると提唱しました。
- 自己受容
- ポジティブな人間関係
- 自律性
- 環境の統制感
- 人生の目的
- 個人的成長
価値観が明確であるほど、これらの領域での満足度が高くなる傾向が見られます。
行動を決定づける仕組み|Milton Rokeachの価値分類
心理学者Milton Rokeachは、価値を2つに分類しました:
- 終末価値(Terminal Values):最終的に達成したい目標(例:自由、平和、幸福)
- 手段価値(Instrumental Values):それを実現するための行動指針(例:正直、勇敢、責任感)
この構造により、例えば「誠実であれ」という信条が、「平和で信頼できる人間関係を築く」という終末価値に紐づいていることが理解できます。
文化による違い|集団主義と個人主義の価値観
文化人類学者Margaret MeadやMary Douglasは、価値観は個人だけでなく文化や社会構造にも影響されると述べています。
- Grid(規範):社会ルールの強さ
- Group(集団志向):個人 vs 集団の重視
たとえば、日本は「高いGrid・高いGroup」の社会であり、「他人に迷惑をかけない」ことが重要視されます。
道徳的価値観の科学的理解|Jonathan Haidtの道徳基盤理論
道徳心理学者Jonathan Haidtは、人間の道徳には以下の6つの基盤があるとしています:
- 配慮/害悪
- 公平性/不正
- 忠誠/裏切り
- 権威/転覆
- 純粋性/堕落
- 自由/抑圧
例えば、同じ「正義感」でも、保守層とリベラル層では違う価値観(基盤)から来ている可能性があり、対話がすれ違う原因にもなります。
価値観の変化と人生の転機
価値観は固定されたものではありません。トラウマや人生の転機、あるいは自己反省によって「価値観の再編成(Reprioritization)」が起こることもあります。
例:
- 事故や病気をきっかけに「健康」が最優先になる
- 子育てを経て「自己成長」よりも「家族」が重視されるようになる
実生活への応用|価値観を活かす3つのステップ
自分の価値観を言語化する
- SchwartzのホイールやRokeachの分類を使ってみましょう。
優先順位を可視化する
- 10個程度に絞ってリスト化すると、意思決定が明確になります。
価値観に沿った行動を取る
- 例えば「創造性」を重視するなら、毎週1時間は創作活動に使うなど。
おわりに|価値観と向き合うことで人生は変わる
価値観とは、自分自身の コンパス(羅針盤) です。
行動や選択の軸がブレていたり、迷いが生じやすい時こそ、自分の価値観を見つめ直すチャンスです。
「自分は何を大切にしているのか?」
その問いへの答えが、これからの人生の道しるべになるはずです。
関連リンク(外部)
元動画:How to Find and Live by Your Values [SOLVED]